熊谷登久平アトリエ跡に住む専業主婦は大家の嫁で元戦記ライター

台東区谷中の洋画家熊谷登久平のアトリエ跡に住む次男に嫁いだ主婦の雑談

ブラマンク的な佐伯祐三的な当時の流行的な千厩警察署 1927

義父こと、熊谷徳兵衛名義で世に残る唯一の作品だった千厩警察署は今は岩手県立美術館にある。

岩手立美術館では熊谷登久平名義。

 

この作品、戦前1927年に熊谷徳兵衛が描いた。

その後千厩警察署に寄贈された時には上野桜木の佛雲堂による額装に熊谷登久平のネームプレートが嵌め込まれている。(額縁に関しては佛雲堂の現当主浅尾空人さんに確認済み)

 

この1927年の翌年1928年の8月16日に佐伯祐三がパリで客死し、日本の美術雑誌がこぞって佐伯祐三特集を組み第一次佐伯祐三ブームと言える時代がきている。

(芸術新潮 45 1994年3月号 日本近代美術の10章 第7章佐伯祐三は本当に天才だったのか? 尾崎眞人 板橋区立美術館学芸員(当時)参照)

 

 

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義父が熊谷徳兵衛で美術団体の公募に出していた時期は短く、展示記録は1930年協会と白日会に記録が残るのみである。

それと、長谷川利行らと谷中で開催した個展。

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徳兵衛は熊谷登久平の本名であるから我が家に残る中学時代の水彩作品、本家に残る油彩作品には徳兵衛の名が残る。

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これは徳兵衛が憧れていた同郷の野獣派画家萬鐵五郎の影響が見られると私は思っている。

 

 

千厩警察署は戦前に千厩警察署に寄贈されたので戦後に登久平に嫁いだ義母は見たことがなく、夫も義兄も現物を見たことがなく、写真でしか存在を知らなかった。

一度1930年協会関係で板橋区の美術館に展示されたことがあるが、その時は東京の遺族に連絡がなく山手線の車内広告で夫の同級生が気づいて連絡をくれて夫が問い合わせたそうだ。

この時は義母も義兄も知らなかったそうで、熊谷登久平の訃報に義母と義兄の名が乗っていたのに何故知らせが来なかったと谷中の熊谷家は面白くなかったようだ。

谷中の熊谷家には熊谷登久平の著作権がない的な考え方を今年の段階でも極一部の親戚が持っているが、千厩警察署のケースは登久平の次男である寿郎が未だに不愉快に語る思い出ではある。

 

この千厩警察署、私は写真で観た時に現物が観たいとずっと願い、岩手県立美術館にたまに展示される機会があるので見ることができて感無量であった。

この絵が千厩警察署にあることを知った板橋美術館の学芸員尾崎眞人さんが再発掘の機会を作ってくださったのはありがたく大切なこと。

後の千厩警察署の偉い人が「これは美術館にあるべきものだ」と言い、それを受けたその時の岩手県立美術館館長だった原田光先生が積極的に動いてくださり修復されて今に至ると聞いている。そして熊谷登久平の作品としてたまに展示される。

その時に作っていただけたレプリカが千厩の熊谷美術館にある。

 

(1930年協会にも熱心だった尾崎眞人さんが初めて熊谷徳兵衛の作品に触れた時に台東区の遺族宅に寄ってくださっていれば、熊谷登久平宅に死蔵されていた長谷川利行のスケッチブックが世に出たかもしれないのにと惜しむ気持ちが私にはある)

 

里見勝蔵らが熊谷徳兵衛と長谷川利行が谷中で開催していた展示会会場に来て、何を思ったのかはわからないが登久平と利行を家に招き一升瓶三本を空にされたのは文書に残っている。

この頃徳兵衛には長谷川利行の影響も見られ、

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里見勝蔵に出会ってからの登久平は里見色も強くなる。

登久平は自分らしさを求め続け長く苦しんだ。

 

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