『雪の浅間 熊谷登久平
りんどうの花を踏んで、小鳥の啼きこゑを聞きながら、浅間山に挑んだことがあった。
毎朝、金縁の眼鏡をかけ、杖をひき、私の写生する後にたって、ずっと私の絵を描くのを見てゐる もう七十歳もまわった、いい風貌の人だった。
私は、すでに功なり名とげて軽井沢に、余生をおくることであろう、この人の半生をいろいろと考へるのだった。
そしてこの人も私の若い姿を見て、過ぎ去った過去と思ってるように思はれた。
雑木林の中からズドンと猟銃の音がする。 私が画架をたみかけると、この老人もふりかへりながら
雑木林のなかに去っていった。
私も若かった、口笛を吹きながら、重い道具をさげて、時次郎そばでも食ふてやろうと歩いてみた。
浅間はときおり高くたかく煙をあげてある。
(原文まま)』
散文すぎて(T ^ T)