熊谷登久平アトリエ跡に住む専業主婦は大家の嫁で元戦記ライター

台東区谷中の洋画家熊谷登久平のアトリエ跡に住む次男に嫁いだ主婦の雑談

旅に出たい

家が辛い、トイレに入ると明智抄さんを思い出すし、ウォシュレットが形見だから。

台所に立ち包丁を見ると明智さんの不器用な包丁捌きを思い出して泣けるし、彼女が記念に持ち帰った下谷警察署からもらったシャモジと同じモノを見て泣けるし、階段を見ると泣けるし、葬式や通夜や香典や花は生きているものの為にあるんだなと。

私、今まで生きてきて親や友人や血縁や猫が死んだけど、明智さんほどの衝撃はなかった。

で、明智さんは私の方が先に死ぬと思っていたから私の香典の話とかもしていた。
のに先に死なれた。

最後に一緒にホテルに泊まったのは名古屋のSF大会CAPCOMだっけ、それともコーエーとの打ち合わせ後に彼女が新幹線代を出してくれた熱海のバブリーなリゾートマンションだっけ。
私が笹かまぼこの数が少ないと、銀行員に当たり散らしたら明智さんがその騒動をファンクラブ会誌に描いたんだよね。

今の私は熱海のリゾートホテルの会員権を持っているし、笹かまぼこを持ってリゾートホテルに泊まって海を見て馬鹿やろーと叫んでも良いのではないかと。
今もガレの作品を展示している場が残っているか確認する気もしないけど、金色夜叉の松は今もあるだろう。
あそこから海を見て叫んで、笹かまぼこを山のように食べるのは私にとって癒しになるのではないだろうか。
そして無責任にビールを飲んで、家族に見せられない同人誌を持ち込んで読む。

身体中に溜まっている怨念をそろそろ流さないと私は祟り神になりそうな気がする。



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