熊谷登久平アトリエ跡に住む専業主婦は大家の嫁で元戦記ライター

台東区谷中の洋画家熊谷登久平のアトリエ跡に住む次男に嫁いだ主婦の雑談

#銀座 #カフェー #サロン春

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岩手県千厩に行った時に、夫の従兄の奥様が「2代目伊助さんの奥様が登久平さんが22歳下の房江さんと結婚した時に、衣子(政恵)さん寂しそうだったって言ってた」と、教えてくださった。

登久平の弟の妻が同情する存在の衣子と名乗っていた政恵。千厩から訪れた親族をもてなしていたという政恵、熊谷家の一族からは嫁として見られていたのだろう。

(以下は衣子と書く)

戦前から戦後しばらくまで内縁であった衣子。

妻が妊娠してから入籍をする形は良くあり、彼女は子を待てなかったために内縁が続いた。

(しかし、登久平の親戚の一部は入籍していると信じていた。それぐらい彼女は登久平に寄り添っていた)

妊娠を望み、衣子は妊娠せずかもしかしたら流れたかをし、他の登久平の愛人たちも子に恵まれず、名家の長男であった登久平は次男の英三を養子に迎えたいと考えるようになっていた。

千厩の生家には英三を養子にと登久平が書き送った手紙が残っている。

衣子も英三を可愛がっていたので受け入れることになっていた。

だが、戦後、登久平が山形県の米沢から連れ帰った衣子より31歳下の房江が数年後に妊娠した。

登久平と房江は長男久が生まれる少し前に入籍している。

熊谷夫婦の次男である夫が聞き覚えているのは、房江はその前に何回か流産をし、久が未熟児で生まれた時に千厩の当主であった登久平の父は喜び、久に象を買うと言い出して千坪の土地の名義を内孫である久に分けたという。

房江の日記には日野屋当主が久を見に訪問したことが書かれている。

千厩から台東区谷中まで新幹線もなく蒸気機関車の時代にだ。

喜ぶ日野屋当主と登久平、西川で一番良い布団を揃え、ドイツからウィルヘルムのピアノを取り寄せた。

だが、尊敬する登久平の養子になることがほぼ決まっていた英三は複雑であったろうし、20年妻として側にいた衣子は悲しい顔もしただろう。

 

登久平より10歳上だった衣子は、中央大学時代に卒業後家に帰らない画家になると言って勘当され仕送りを絶たれた彼を支えた。

 

登久平が賞を取り勘当を解かれた時の岩手県の新聞記事に「喜びの坊ちゃんと奥様」的な写真があり、嬉しそうな登久平と衣子が並んで写っていた。

また、上野桜木の浅尾丁策さんの著書に「熊谷登久平は俗にいう髪結いの亭主」と、おそらく戦前の日記を参考に書かれた記述がある。

カフェーサロン春のマネージャーと書くだけで読み手が分かると思われていた存在は銀座のカフェーサロン春であろうし、衣子には関西訛りがあったと千厩の熊谷家では伝わっている。

サロン春は関東大震災前から銀座にあったカフェプランタンやライオンと異なり震災後にできた。

関西訛りの政恵がマネージャーということは震災後に大阪から参入した大阪勢の一つであったのかも知れない。

藤田に頼まれ仕事をしていたとの話もある。

大阪勢のカフェの多くはエロを売りに参入したが、当時の記事を読む限り、サロン春は女学校出以上の美人を揃えチップも高い高級カフェでエロを売りにしていないようだ。

サロン春の記事の中で衣子は源氏名で登場する。

 

 

ごめんなさい、多分衣子。

違ってたらどうしよう。

 

 

でもあの、美人モデルに囲まれていた浅尾丁策さんが少し嫉妬を滲ませた日記を残しているのだから衣子も有名な美人であったと思うんですよ。新聞記事に美しいとあったりもするので。

 

 

 

衣子たちを贔屓にしてくれていた客に菊池寛とかあって、私は夫に何故聞き取りをしておいてくれなかったのかと文句を言いたい。夫は義父が衣子を菊池寛から奪った的な話しを義母から聞いているが、真相はわからない。

 

そしてサロン春を巡る人たちの中にB-29操縦マニュアルで協力して下さった大倉徳一郎さんの御父様の大倉喜七郎氏の名もある。

(徳一郎さんの祖父の喜八郎氏は勝海舟の親友熊谷伊助の友人だったし一緒に写真残っているし、大倉財閥の世界って狭いのかしら。

大倉家の奥様は戦前茶の湯のため上野桜木に通っておられたと町会史に残っているし、狭いわ。)

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